―メガネ―

 
 
 
 
「いらっしゃいませー」
店に入るとすぐ、店員がお決まりの台詞で出迎える。店が醸し出す独特の清潔感、ずらりと並ぶ商品。
「今日はどのようなご用件で?」
そう今日はメガネを買いに来た
 
 
まさか自分がメガネを買うことになるなんて思いもしなかった
昔から目がいいのが自慢だったし、それぐらいしか自慢するところが無かった
「つかメガネ多すぎて何がなんだかわかんねぇ・・・」
涼は店内に所狭しに並べられているメガネを見て、少しばかりげんなりした
こんなにごちゃごちゃ並べられたらどのメガネも同じに見えてくる
 
そこへメガネを持った護が寄ってきて涼に
「涼、これなんかどう?」
護は手に持っていたメガネを丁寧に涼にかけると、神妙な面持ちで涼の顔に見入っていた
護が持ってきたメガネは小さめの赤縁メガネ。
(可愛い・・・)
護は意外にメガネ萌えだった
「なんだよ、どうせ似合ってないだろ・・・」
護が凝視してくるのを勘違いしたのか、涼は自嘲気味に笑ってメガネをはずした
涼の中でのメガネは知的な雰囲気を醸し出したり、落ち着いた感じの人がつけたりするものだという勝手な概念がある。涼には程遠いイメージである
護になら似合うのだろが、自分にはとてもじゃないが似合わない
「すごく似合ってるよ」
涼の不安げな問いにまたもや可愛いと思う護であったが、口元に軽い笑みを浮かべて涼の不安を拭ってやった
「ホントに?」
普段から自信に満ち溢れているように見える涼だが、本当は不安になることがよくある。
「ホントだよ。でも似合ってるって言うよりか可愛い」
護は涼の長い金色の髪を撫でて、頬をそっと触った
「は、恥ずかしいこと言うな!」
「だってホントだし」
さらっとそんなことを言われたものだから、涼は恥ずかしさがこみ上げてきた。護は恥ずかしい台詞を平気で吐く。これでは身が持たない
「ど、どうだ!ゴ●ゴ13みたいだろっ」
照れ隠しに、近くあった大きめのグラサンをつけてふざけてみたが、それでも護は優しく微笑んで涼を見つめていた
 
「どうする?それがイヤなら新しいの探すし」
「ううん、これにする!」
涼はそう言うとまだ買ってもないのにメガネを握りしめた
護が選んでくれたやつだし、なにより護が似合ってると言ってくれたから
「そう、じゃあ俺も・・・」
そういうと護は涼と同じメガネを手にした
「俺もちょうどメガネ買おうと思ってたんだけど、どうせなら同じヤツにしようと思って」
護はちょっと嬉しそうだ。当然、それを聞いた涼も嬉しい。
(護がそんなこと言い出すなんて・・・)
正直かなり驚いたが、護もちょっと照れくさそうにはにかんでいた
護のそういう姿を見ると、涼はたまらなく嬉しくなる
護は普段からあまり笑わない。どちらかというと無愛想な方だ
そんな護が、自分にだけは笑顔を向け、甘く優しい言葉を囁くときもある
自分だけしか知らない護がいることが、なんだかとても嬉しい
「じゃあ買おうか」
「うん」
 
涼と護のお揃いのメガネ
それは二人の宝物
ずっといっしょにいようねの印